彼の瞳に捕まりました!


マサル君の言葉通りに、濃いめに作られたハイボールを飲みながら、他愛ない話しが続いていた。
クミコさんも他のお客さんの対応をしながら私達と話しをしていた。

「行成となにかあった」

「え?」

グラスに残っていたウイスキーを飲み干し、クミコさんにお代わりを告げながらマサル君は神妙な顔で尋ねてきた。

「ていうか、行成と麻生ちゃんの関係って、なに?」

高瀬と私の関係

大学の同級生で、
会社の同期で、

そしてーーー
私のハジメテの、

そんな関係。

「麻生ちゃんと」

「え?」

「行成」

「うん?」

「二人は、恋人?」

マサル君の言葉に、首を振る。

「でも、キスしてるよね?」

クミコさんがそっと置いたウイスキーを飲みこみ、マサル君は言葉を続ける。

「行成はともかく……麻生ちゃんは軽い気持ちでキスなんて出来ないんじゃないの?」

軽い気持ち。
そう言われて、胸がざわついた。

高瀬と最初にキスしたのは……

あの日―――
高瀬のアパートで刹那的な時間を過ごした時。

噛みつかれるような、
だけど優しいキス。
それが高瀬との初めてのキス。




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