彼の瞳に捕まりました!
「何で泣きそうな顔なわけ?」
新しいグラスを傾けながらマサル君は困った様に眉を寄せた。
「私……
だって……」
「麻生ちゃん、かわいっ」
クスクスと笑い声をたててマサル君は私の頭を撫でると、優しい声をだした。
「素直になれば、絶対楽になるんだから。
ちゃんと素直になってね」
素直になる。
それが、一番簡単で一番難しい。
そう感じたけれど、口に出すことは出来なかった。
「また、難しく考えてる」
私の眉間に指を押しあてながらマサル君はそう言うと、睨むようなまなざしで私を見つめた。
「あのね、頭で考えるものじゃない訳。わかる?
感じるものなのよ。恋っていうのはね。ビビってきたりするのが恋なわけ。
こういう風にならないとだめだとかじゃないわけよ」
「こういう風?」
「決まりなんてないって言いたいのよ。
ほんと、いちいち……麻生ちゃんってバカでしょ」
「……」
「人を好きになるのにさ、こうじゃなきゃいけないなんて決まりないでしょ?」
「あ、うん」
「行成と麻生ちゃんの出会いがどんなだったのかなんて知らないわよ、私。
だけど、今麻生ちゃんが行成の事を好きなのは本当なんだから、それでいいじゃないって言いたいんだけど」