彼の瞳に捕まりました!


「でしょぉ~」

満足そうに笑顔を浮かべてマサル君は、

「で、どうなってんのよ」

と先をせかした。

「どうって、何もないよ」

そう、何もなかった。
終わりにしたんだから。

「えぇ?何もないわけないでしょ」

「……ちゃんと、断ったから何もないの」

言葉に感情がこもっていないって、自分でも思うような冷たい声が出た。
そんな私に構うことなくマサル君は、

「もったいなぁ~い」

と茶化すような返事をした。

「もったいないって……」

「だって、あの『あさかわ』の社長の奥さんになれるのよ?
贅沢し放題じゃない。今からでも遅くないって、麻生ちゃん」

「マサル君?」

「麻生ちゃんが、社長と付き合うようになって、傷心の行成を私が慰めてあげるのよう」

「傷心……?高瀬が?あり得ないんですけど」

高瀬は私の事何とも思っていないんだから……
だから私が誰と付き合ったって関係ない。
傷心なんて、そんなのあり得ない。

なのに―――

マサル君は私をじっと見つめると、これ以上ないっていうくらい嫌な顔で、大きな大きなため息を吐いた。




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