彼の瞳に捕まりました!


思い当たるのはたった一日。

浅川社長と食事をした日だけ。

すすめられるままに日本酒を飲んで酔っ払ってしまったあの日。
別れ際、社長にキスをされた。

社長とのキスは事故だったんだ。
そんな風に自分に言い聞かせながら眠ってしまった事はおぼろ気ながらも覚えている。

自己暗示をかけながら意識が遠退いて行って……

それからーーー

そうだ、変な夢を見たような気がする。

誰かが私にキスをした。

優しいキスだった。


それが誰かはわからなかったけれど。
やけにリアルだった気がしていた。

でも起きた時には、部屋の中には誰もいなかったし、高瀬の様子も特に変わったところはなかったと思う。

あの日、二日酔いの状態のまま休日出勤をして……
それから、サトコちゃんと高瀬が暗室で……


そう言えば、しばらくしてから高瀬が変な事話していたような。


『キスされたら好きになっちゃった?』


バカにしたような、呆れたような、皮肉混じりの言葉。


何で知ってたんだろ?

私が社長にキスされたって。

どうして高瀬は知っていたんだろう?


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