彼の瞳に捕まりました!
「高瀬に私が電話をかけたんだよね?」
確かめるように尋ねた私に、マサル君は呆れたように頷く。
「そぉよ。だって行成『菜穂』って呼んでたわよ。麻生ちゃん、菜穂でしょう?」
「うん」
「行成ったら、今まで見たことない位焦った顔だったわ」
「焦った顔?」
「そぉよう。行成が焦った顔するなんて、そうそう無いじゃない。いつも余裕な表情でさ。麻生ちゃんからの電話だって、最初はそんな顔で話してたけど、すぐに表情変わって焦って帰って行ったのよ」
本当に覚えてないの?
そう、疑うように私の顔を覗きながらマサル君はウィスキーを飲み込んだ。
そんなマサル君に返事が出来ないまま、いつの間にか置かれていたハイボールのおかわりのグラスを取ると、中身をごくごくと飲み込んだ。
あの日、
夢だって思ってたキスは、
幸せって、なんだか感じたあのキスは……
もしかして、
本当に高瀬がしてくれたキスだったんだろうか?