彼の瞳に捕まりました!


「多分その日はね」

小さな声で話し出した私の事を、マサル君はじっと見つめた。
そんな彼の瞳を見つめかえして、言葉を続けた。

浅川社長と会ったこと。
苦手な日本酒を注がれるまま飲んで、酔うだけ酔ったこと。
帰り際にキスされたこと。

夢で誰かにキスされたこと。

すごくすごく優しくて、
すごくすごく幸せだったこと。

それから……


暗室で高瀬とサトコちゃんのこと。

話し終えて、なんだか淋しくて仕方なかった。

私、高瀬に酷い事ばかりしてた。
そんな私に高瀬が愛想つかすなんて当然だ。

サトコちゃんに言い寄られて、そういう関係になってしまっていたとしても、何の文句も言えない。


自分が情けなくて、
みっともなくて……

涙が溢れた。



< 133 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop