彼の瞳に捕まりました!
「電話しなさい」
「へっ?」
「自分の気持ち判ったんでしょ。だったら伝えないと。行成に電話するのよ」
「え?いやっ、でも……心の準備とかさ」
「そうやって言い訳して逃げない」
携帯電話を私の手に押しつけ、マサル君は厳しい視線を向ける。
「逃げるのは楽よ。だって自分は傷付かないものね。その代わり絶対幸せになれないから」
真剣な眼差しのマサル君に返す言葉が見つからなくて、渡された携帯電話を見つめた。
逃げてるのだろうか?
今までも、なんだかんだと理由をこじつけて逃げていただけなんだろうか?
マサル君に視線をゆっくりと戻した。
彼は私の顔を黙って見つめ返すと、柔らかな笑みを浮かべて頷いた。
「はあぁ」
息を吐き出し、携帯電話を操作する。
仕事以外に掛けることなんてない番号。
知り合って10年近く経つけど、多分今が一番緊張している。
そう感じた。