彼の瞳に捕まりました!
高瀬は来るもの拒まずだから。
大学生の頃からずっと……
だから、サトコちゃんとだって……
「麻生ちゃん」
「だ、大丈夫。大丈夫だよ」
涙は止まらない。
だけどマサル君にこれ以上心配をかける事は出来ない。
「大丈夫……」
掌で涙をごしごしと拭き取り、テーブルに置かれたお酒を一気に飲み込んだ。
「やだ、麻生ちゃん
そんな飲み方しないっ」
焦ったように私の手からグラスを抜き取ると、マサル君はクミコさんにそれを押し付けた。
「行成と話せたの?」
その言葉に黙って首を横に振った。
「まだわからないじゃない。
ねぇ、麻生ちゃん。
まだ何にも始まってないわ。
ねえ、始まってないのよ?」
小さな子供に言い聞かせるように、マサル君は私の目をじっと見つめて真剣な声を出した。
まだ何にも始まってない。
マサル君の言いたい事は、何となく理解できる。
だけど、だけど……
胸の中に渦巻く、言葉に出来ない感情に冷静に考えるという行為は出来そうになかった。