彼の瞳に捕まりました!

「モデル、やるわよ。
やれば、いいんでしょ」

「そうこなくちゃな」

高瀬はゆっくりと立ち上がると、私の鞄を手に持つと、

「ナホの気が変わらないうちに」

そう言って、ニヤリと笑った。


迷うことなく歩く高瀬の後を着いて行く。

住宅街の中。
公園やコンビニが近くにある、多分学生向けのアパート。
その1室。

彼は、ジーンズのポケットから鍵を取り出すと差し込んで扉を開けた。

「どーぞ」

「ここは?」

「俺ん家だけど」

だからどうしたと言わんばかりの高瀬に、戸惑いを覚える。

「ここで、撮るの?」

「そうだけど、なんか問題ある?
ていうか、ナホだって俺との事、知られたくないんじゃないの?」

「え?」

「カレシ、いるんじゃねぇの?」

「え、あ……そうだよね」

曖昧な答えを返し、高瀬にわからないように息を吐いた。

本当は、彼氏なんていない。
今まで全くいなかったわけではないけれど……
いつも、本当に好きなのかな?
そんな風に思ってばかりで、キス以上の事をした事がないのが事実だった。

そんな私にお構いなしに彼は、ワンルームの部屋の扉をあけると

「どうぞ」

と私を中へ招き入れた。

< 14 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop