彼の瞳に捕まりました!
「モデル、やるわよ。
やれば、いいんでしょ」
「そうこなくちゃな」
高瀬はゆっくりと立ち上がると、私の鞄を手に持つと、
「ナホの気が変わらないうちに」
そう言って、ニヤリと笑った。
迷うことなく歩く高瀬の後を着いて行く。
住宅街の中。
公園やコンビニが近くにある、多分学生向けのアパート。
その1室。
彼は、ジーンズのポケットから鍵を取り出すと差し込んで扉を開けた。
「どーぞ」
「ここは?」
「俺ん家だけど」
だからどうしたと言わんばかりの高瀬に、戸惑いを覚える。
「ここで、撮るの?」
「そうだけど、なんか問題ある?
ていうか、ナホだって俺との事、知られたくないんじゃないの?」
「え?」
「カレシ、いるんじゃねぇの?」
「え、あ……そうだよね」
曖昧な答えを返し、高瀬にわからないように息を吐いた。
本当は、彼氏なんていない。
今まで全くいなかったわけではないけれど……
いつも、本当に好きなのかな?
そんな風に思ってばかりで、キス以上の事をした事がないのが事実だった。
そんな私にお構いなしに彼は、ワンルームの部屋の扉をあけると
「どうぞ」
と私を中へ招き入れた。