彼の瞳に捕まりました!


『ちゃんと行成に聞くのよ』

別れ際そう言ったマサル君。
その言葉は胸に残っているけれど、実行できないまま時間だけが過ぎて行っていた。

今日は『あさかわ』での仕事。
前回は高瀬と来たこの場所に、今回は小此木さん、佐々木さん。
それから、小此木さんの助手の井口君との4人。

高瀬は別の現場で木村さんとサトコちゃんと一緒だ。
それと、確かマサル君も一緒だった。
この間、マサル君から電話がかかって来て、

「あたし、ちゃんと見張ってるからね」

とか何とか話していたような気がする。

「麻生」

小此木さんに呼ばれ、顔をあげた。

そこには、以前と同じような笑顔を見せる浅川社長が立っていて、私を見てクスッと笑った。

「ご無沙汰しております」

頭を下げながらそう言って社長に近付く。

「お久しぶりですね。取材ありがとうございます」

「いえ、こちらこそありがとうございます。
秋の庭も色鮮やかで素敵ですね」

庭の木々と、その奥に見える山の紅葉がとても鮮やかで心を奪われてしまうようだった。

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