彼の瞳に捕まりました!
冗談だよね…?
口調は軽い。
だけど、眼差しは真剣だ。
ちゃんと返事しなきゃダメだ。
そう思うのに、言葉が出てこない。
「菜穂さん?」
黙ったままの私を不思議そうに見つめる社長に思わず頭を下げた。
「あ、あのっ。ごめんなさい。
社長にはもっと素敵な方がいらっしゃいます……だから、だから……本当にごめんなさい」
「……」
頭を下げたままで、社長の様子を伺う。
彼は何も言わずに私を見つめている……そんな風に思えた。
はぁっと、息を吐いて、ゆっくりと顔をあげる。
彼は、口元を手のひらで押さえ肩を振るわせていた。
「えっと……あの、社長?」
「クックックッッ」
社長は片手で、ごめんとジェスチャーをしながら息を吐き出すと、笑いをこらえた顔を私に向けた。