彼の瞳に捕まりました!
「その辺、テキトーに座って」
カメラの置かれたケースを開けながら、高瀬が顎をしゃくる。
その行為に、ため息をつきながら辺りを見渡した。
物が乱雑に置かれた床と、寝乱れたベッド。
どちらも『座る』なんて出来そうになくて……
呆然と立ち尽くした。
そんな私に、
「なんだよ……ベッドに座ればいいだろ」
面倒くさそうに、私の背中を押しながら高瀬は言うと、ベッドへと座らせた。
「撮るから、脱いで」
「へっ?」
「コート、脱いで」
「あ、あぁ……コートね」
高瀬の言葉にいちいちびくつくのがなんだか悔しくて、コートに手をかけると一気に脱いで、床に置いた。
「やる気満々?」
馬鹿にしたような声に、返事をすることなく、真っすぐに高瀬を見つめた。
「いいじゃん、その目」
カメラを構えて私を見つめる高瀬は、さっきまでの雰囲気を一変させていた。
まるで、猛獣に追い詰められている。
そんな風に感じて怖気づいてしまいそうになる。
「怖い?」
クスリと笑いながら聞く高瀬。
「寝言は寝てから言いなさいよ!」
「……口の減らねぇ女。見た目とは全然だな」
「おあいにく様。この顔好きじゃないのよ」
口喧嘩のようなやり取りを繰り返し、その合間に何枚もの写真を撮られていく。
高瀬がシャッターを切る度に、その距離が近づいてきて
いつの間にか、彼のベッドに横たわった私を高瀬が跨って見下ろす。
そんな様子を、なぜか他人事のように受け止めていた。