彼の瞳に捕まりました!
『心当たりない?』
「……ごめんね。分からない」
首を振りながら返事をしていると、視界の端の方に高瀬の姿が写った。
コンビニに行っていたのか、白いスーパーバックを片手に、もう一方の手には缶コーヒーを持ってこっちへまっすぐに歩いてくる。
『麻生ちゃん、行成とちゃんと話してるの?』
「へ?あ…………うん…………」
目の前を通りすぎる高瀬。
チラリと一瞬だけ私の方に目を向けたかと思うと、そのまま通りすぎて行った。
「……た、かせ?」
毎回話しかけられていたわけではない。
だけど、話しかけなかった時でもイジワルな笑みを浮かべて通りすぎていた。
今みたいに無表情で通りすぎる事は今までなかった……
想像もしなかった彼の行動に、胸が苦しくなった。
「なん、で?」
離れていく背中に呟いた言葉がむなしく感じた。