彼の瞳に捕まりました!
『麻生ちゃん?』
「あそーう!」
受話器の向こうから聞こえるマサル君の心配気な声と、部屋の奥から聞こえた編集長の声が重なる。
ハッとして、顔を編集長にむけると、彼女は受話器を持ち上げた格好で、
「2番に電話」
「はーい。
マサル君ごめん。電話きたの。
明日の時間なんだけど、8時半に編集部にきて」
何か言いたげなマサル君にもう一度謝って電話を切ると、自分のデスクに置かれている電話の受話器を取ると、言われた番号を押した。
「お待たせしました。
麻生です」
『……麻生、菜穂さん?』
初めて聞く声に、体が固くなった。
「はい。麻生菜穂ですが……」
『突然すみません。
私、大沢憧と申します』
大沢……憧……?
高瀬が学生時代にアシスタントをしていたっていうカメラマンの大沢憧?
思わず同じ部屋の中にいるであろう、高瀬の姿を探した。