彼の瞳に捕まりました!


「罪滅ぼしですから」

寂しそうな笑顔で大沢さんはそう言うと、隣の椅子に置いてあったファイルケースを取り上げると、中から写真を取り出した。

そして、私の前にそっと置くと、

「これはあなたですよね?」

水辺に佇む女性。
小さくてよく分からないけれど、確かに私の横顔に見えないこともない。

「引き延ばしたものがこちらです」

少しだけ画像の粗い写真。
ボヤけていた周りの景色も大きくなっていた。

その景色に記憶が甦る。


あれは、大学の2年生になって少したった頃。

突然の休講に1日ぽっかりと予定がなくなって、一人電車に揺られあてもない旅をした。

行き着いた場所は海で、しばらく潮風にふかれていたっけーーー



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