彼の瞳に捕まりました!


「ミイラ取りがって気分だ」

やや自嘲気味に高瀬が笑いながら、私の首筋に唇を這わせる。
強弱を付けて、角度を変えて何度も何度も。
カメラを持っていたはずの手が、壊れ物を扱うかのように私に触れて
ゆっくりと移動した。

その行為に身体に力が入る。

そんな私に、高瀬は
優しく微笑みかけると、
「緊張してんの?菜穂」と髪の毛に唇を落とした。

「き、緊張って言うか………は、は」

―――初めてなの

そう続くはずの言葉は、高瀬の唇に飲み込まれて行った。


高瀬の熱に触れて

息が苦しい―――

ハジメテなのに―――

ハジメテなんだけど――――

痛みとそれ以上の何かに意識が飛びそうになるのを、高瀬にしがみつくような格好でやり過ごした。

多分、高瀬は噂通りに女性の扱いに慣れているんだろう―――

どこで気が付いたのか、バツが悪そうに、
「ごめん、初めてだったんだな」
と、呟いた。

そんな彼と目を合わせる事なく、首を横に振ると散らばっていた洋服を身につけ、逃げる様に部屋を後にした。

ハジメテだから、

大切にしていたけど―――

こんなふうに、

最低で。
最悪な、

ハジメテを経験して……

だけど、なぜだか、
そんなもんなのかも知れない。

なんて、自虐的に思ったりする自分がいた。


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