彼の瞳に捕まりました!


「どうしてこの写真……?」

やっとの思いで出した言葉に、大沢さんは表情を少し柔らかくすると、私を見つめた。

「この写真を見つけた時、すごくワクワクしました。
粗っぽいですが、センスを感じました。
行成の名前を見て納得しました」

「納得?」

「彼の父親はカメラマンでした」

「でした…?」

過去形で話す大沢さんに首をかしげる。

「行成が大学生の時でした。父親である高瀬淳宏(あつひろ)が中東での取材中に、戦闘に巻き込まれ脚に銃弾を受けました。
幸い一命は取り止めたのですが、脚の損傷が激しくカメラマンとして活動出来なくなりました」

「……そうなんですか……」

それ以上、言葉が出てこない。
ニュースで見たことのある、遠い現実。
その現実をこんな風に知らされるなんて思いもしなかった。

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