彼の瞳に捕まりました!
和美さんは、ちょっとだけさみしそうに笑うと、テーブルの上の写真をそっと撫でて、
「中東に行けばきっと今まで体験し得なかった事を……いい事も悪い事も、きっとたくさん経験する事が出来て、その後の行成君のカメラマンとしての人生にきっとすごく役に立つ……そう思うの。
だけど、それは他人の私だから簡単に言える事なのよね」
「和美さん?」
「本当はね、行って欲しくなんか無いの。
もしかしたら、死んで帰って来ちゃうかもしれないそんなところになんて、行って欲しくない。
日本でだって、仕事はたくさんあるし、もし仕事がなくなったって、憧君一人くらい私がどうにか養ってあげるのに、って思っているの」
ずっと我慢してきたものを吐き出すように、和美さんは喋り続けた。