彼の瞳に捕まりました!
「自分の事ばっかり、私って本当に酷い奥さんよね」
自虐的な笑顔に、胸が痛くなった。
「そんなこと、ないです。
大切な人が危険だとわかっている場所に行くことを平気に思う人なんていないと思います。
だから、酷いだなんて言わないで下さい」
「麻生さん。泣かないで」
和美さんの指が頬に触れて、始めて自分が泣いている事に気がついた。
「大沢の写真が本当に輝くのは、戦場の写真なの。大沢本人も周りもそう思っているし、私もそう思う。
だから、彼には行って欲しい。そう思っているの。
だけど毎回やっぱり辛いのよね」
「和美さん」
「この店ね。
大沢が、自分にもしもの事があったとしても、私が一人で塞ぎこまないようにって、友人知人が来て、毎日笑顔で過ごせるようにって……勝手よね」
次々と溢れ出す涙を止めようとせずに、和美さんは笑いながら呆れた声を出した。