彼の瞳に捕まりました!
10
「あーそーう」
編集長の抑揚のない声が部屋の中に響く。
編集長のデスクの脇で肩をすくめて小さくなる私に、編集長は大きなため息をついた。
「ちゃんとチェックしたの?」
赤ペンで訂正された原稿。
真っ赤に染まったそれを見つめながら、頭を下げた。
「すみません」
「謝りゃいいって訳じゃないでしょうが」
ため息混じりにそう言って、編集長は原稿を私に押し付ける。
「至急、訂正します」
「今日中ね」
「はい」
「あと、こっちもよろしく」
クリアファイルを乱雑に押し付けながら、編集長はまた長いため息をついた。
「高瀬に渡しておいて、こっちも大至急で」
「高瀬にですか?」
思わぬところで出てきた名前に心臓が音をたてた。