彼の瞳に捕まりました!
ここに来るの、どのくらいぶりだろう?
オレンジ色の光に照らされながら思った。
部屋の前を通る事があっても、中に入ることが出来なかった。
あの日の事が思い出されて、苦しくなるから……
暗幕をしっかり閉めたのを確認して、2つ目の扉をノックした。
扉の向こう側から微かな音が聞こえて、こちらに近づいてくる足音が聞こえた。
「はい?」
扉のすぐ側で聞こえた声。
その声に、鼓動がはやるのを押さえながら、
「麻生だけど」
「ナホ?」
「編集長から預かりものしてきたの。開けて」
ゆっくりと扉が開く。
暗室用のパーカー姿の高瀬。
その姿に、胸が苦しくなった。
「どうぞ」
人ひとり通れるスペースを開けながら、片手でドアを押さえる彼の脇を通り抜けると、部屋の奥の作業台へと足をむけた。