彼の瞳に捕まりました!


「ずいぶん、余裕だな?」

「なんでよ?」

「編集長に呆れ顔で怒鳴られてたのは、どこのどいつだっけ?」

「っ……」

さっきまでの状況を思いだし、言葉に詰まる。
そんな私に高瀬はこれ見よがしに鼻で笑った。

「人の心配する前に自分の心配しろよ」

「それは……」

それ以上言葉が続かない。

高瀬は黙り込んだ私に背を向けると、やり途中の現像を再会した。

慣れた手つきで、黙々と作業する高瀬の後ろ姿。
普段、見る事のないその姿。

脳内に、大沢さんの姿が浮かんだ。

「なんで、カメラマンになろうって思ったの?」

唐突な問いかけに高瀬は振り向くと、何かを考えるかのように目線を上にあげ、私をまっすぐに見つめた。


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