彼の瞳に捕まりました!


待ってろって……

入り口の端から、部屋の中を覗きこむ。
高瀬の言った通り、真っ赤な顔でパソコンを睨むサトコちゃん。

その奥で、肩を震わせる木村さん。
それから、編集長にファイルを渡しながら話している高瀬が見えた。

写真、ちゃんと直したんだ……。
にっこりと笑う編集長を見てほっと息をつくと、扉から少し離れた場所で壁に寄り掛かった。

もし、高瀬が大沢さんと一緒に中東に行ったら、こんな風に帰りに一緒にご飯を食べに行く事も出来なくなるんだ……
それより、こうやって会社で会う事も出来なくなってしまう。

今まであたりまえと思っていた事が、あたりまえじゃなくなる。
そんな事実に思わずため息が漏れた。

高瀬の事を大事に思うなら。

中東に行かせるの?
それとも―――



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