彼の瞳に捕まりました!


「え?ちょ………と、高瀬君?」

思わず呼び止めた私に、高瀬は眉をひそめながら振り返る。

「高瀬君も、なの?」

私の言葉に、彼はため息をつくと、

「辞令、出てただろ」

心底呆れたように返事を返した。

「だって、高瀬君って今まで報道だったから」

「報道から女性誌なんて、よくある話し。だろ?」

「そりゃ、そうだけど……」

言葉に詰まる私に、彼は
「話しは終わりか?」
と確認だけして、また背中を見せた。

だって、高瀬の報道写真は、社内でも評判がよくて。

だから……
女性誌に高瀬が来るなんて、全く想像もしていなかったんだ―――

その後は、高瀬と会話をする事もなく、バタバタと引っ越しを終え、新しく生まれる雑誌についての説明を兼ねた打ち合わせ。
その後、新しくなった自分のデスクに戻ると、企画書を練りつつ、社内をあちこち動きまわり雑務をこなした。

そして、一段落した頃に新編集長である、桝田多栄子(ますだたえこ)が、声をあげた。

「みんな、お疲れ様。
仕事はここまでにして、今日はみんなで顔合わせを兼ねての食事会にしよう」

その言葉に、ピンッと張っていた空気が緩んで、みんなに笑顔が浮かんだ。


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