彼の瞳に捕まりました!


「家まで来い。
そう言ったのは一回だけ。
あさかわの社長と飲みに行ったあの日だけ」

「……」

「社長にキスされた。
そう言って、俺に会いたいって駄々こねた」

マサル君が言っていた事は本当だったんだ……
疑っていた訳じゃないけど、夢だって思ったから。

あの日、目覚めた時に夢だと思った事は、全部本当にあった事だったんだ……

「夢だと思ってた。
社長に別れ際にキスされて。全部、夢だって言い聞かせながら寝たから……全部夢だと思ってた。
誰かが優しく抱きしめてくれて、いろんな所にキスしてくれた。
全部、自分に都合のいい夢だと思ってた」

ちゃんと覚えていなかった自分が情けなくなって、崩れ落ちるように、行成に覆いかぶさった。

覚えていなかった。
ということは……

もしかすると、もしかして……



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