彼の瞳に捕まりました!


「菜穂は酔っぱらうと子供みたいになるぞ」

両手を頬にあて、ゆっくりと胸から顔を持ち上げながら彼はおかしそうに言う。

「……うぅぅ」

「キスどころか、その先まで強請って……」

「う、うあぁぁぁ」

その先って、その先って……

「ちゃんと、おねだりしたから。ご褒美あげようって……」

意地悪な眼差しを向けながら話す行成。
次に出てくる言葉が、怖い。

でも……
抱かれた記憶がないなんて……

「なったんだけど」

「だけど?」

「お前、熟睡してさ。
何しても起きなかったから、しなかった」

し、しなかった。んだ……

その言葉に、ほっとしたのか残念なのかよくわからない感情が湧き出て、思い切りため息をついた。


< 215 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop