彼の瞳に捕まりました!
「……村松」
「何よ?」
「早く言ってよね!」
ゆったりとした動作で椅子を片付ける村松に、立ち上がって文句を言うと、
彼女は投げやりに、
「自分で気がつかなきゃ意味ないでしょ」
そう言って、
「暗室ね」
と耳打ちした。
写真の裏には、癖のある文字があった。
毎月心待ちにしていた大好きな彼の文字。
【ただいま】
もう、帰るなら教えてくれててもいいのに!
村松も知ってたならさっさと言えばいいのに!
いつだって、彼は
最低で。
最悪で……
エレベーターを待つのももどかしくって、階段を駆け降りる。
久しぶりに来たフロアーの奥。
独特の臭いのある部屋のドアを開けて中に入る。
暗幕の中に滑り込みながら、その先のドアをノックした。