彼の瞳に捕まりました!
山の中腹にある『あさかわ』
その駐車場は、お店のだいぶ手前にあって、車を停めた後は、徒歩で緩やかな坂を上る。
坂の両側には季節の木々や花が彩り豊かに、来訪者を迎えていた。
坂を上りきった所にある立派な門をくぐると、広々とした日本庭園が目の前に広がった。
その中に敷かれた石畳をまっすぐ行けば、歴史の重みを感じさせる日本家屋が姿を見せた。
「うわぁ、立派だね」
ふと漏れた言葉に、高瀬が鼻で笑った。
「飲み込まれてんじゃねえぞ」
「でも……すごい物はすごいから」
そういって、建物を見上げる私を、高瀬は呆れたようにクスッと笑った。
「何さ?」
「自分をしっかり持てよ」
「大丈夫だよ。別に」
そう言葉を返していると、後方から賑やかな声が聞こえて、ゆっくりと振り返った。
「ユキナリ~会いたかったわぁ」
場違いな声をだしながら、マサルくんが元気よく腕を振りながら、小走りで近づいてくる。
高瀬は、そんなマサルくんに苦笑いを浮かべると
肩に掛けた荷物を持ち直し、入り口へと歩きだした。