彼の瞳に捕まりました!


「え?やだあ、ユキナリ~」

マサルくんは、さっきよりも速度を早めて、こちらに向かって来る。
けれど、高瀬はそんなマサルくんを振り返る事なく、建物の中へと入ってしまった。

「あぁーもう。
ユキナリって本当、素っ気ないんだから」

私の隣で立ち止まり、息を整えるマサルくん。
彼は、大きく息を吐くと私をじっと見つめた。

「麻生ちゃん!ちょっと、ボケッと見てないでユキナリ捕まえといてよ」

「あーごめん」

笑いながら謝る私に、マサルくんは眉をぴくりとさせると
「ああん、もうっ」
と叫び声をあげた。

「麻生ちゃん、先行くわよ」

マサルくんはそれだけ言うと、ちょっとプリプリしながら高瀬が待っている、玄関へと向かっていった。

「あーあ、マサルくんてば、困ったちゃんだわ」

クスクスと笑いながら話す声が背中越しに聞こえて、振り返る。

コーディネーターの佐久間さんと、読者モデルの紺野さんと今井さんが顔を見合わせて笑っていた。

「おはようございます」

「おはよう~麻生さん、マサルくんに何したの?」

「何って……?
なんにもしてないと思うけど…私より、高瀬がしてるんじゃないかと思うんだけどね」

玄関で高瀬に抱き着きながら、嬉しそうな顔をするマサルくん。
対照的に困った顔の高瀬。

そんな2人を見つめながら、4人で苦笑いを浮かべた。

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