彼の瞳に捕まりました!


仲居さんに、用意された部屋に案内されて、慌ただしく撮影の準備を始める。

モデルさん達のメイクをマサルくんがしている間に、店の自慢である風情ある庭園と、落ち着いた雰囲気の室内の撮影。

最小限の人数での今回の仕事。
カメラマンの高瀬の指示に従って、アシスタントの仕事をしてまわる。

庭園の撮影をしていると、反対側から他の雑誌なのだろうか?
社長を撮影しているクルーに出会った。

その撮影隊の邪魔にならないように、庭園のすみで撮影の様子を見ていた。

撮影隊の中の中心を見つめたままの高瀬。
彼は大きく息を吐くと、

「戻ろう」

一言、そう言って踵を返した。

「行成」

突然、呼ばれた名前。
その声に、高瀬の足が止まった

ゆっくりと振り返る高瀬。

それに習い、振り返ると、撮影クルーのカメラマンが、こちらに近づきながら、もう一度名前を呼んだ。

「久しぶりだな」

その言葉に、高瀬は頭を下げ、

「ご無沙汰してます。大沢さん」

と、少しだけ堅い声をだした。


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