彼の瞳に捕まりました!
テーブルの上に、レコーダーをセットして、社長へのインタビューを始める。
老舗旅館の大胆なリニューアルへの決断の話。
旅館に対する想い。
料理へのこだわりなど。
私が投げかける質問に社長は真摯に答えてくれた。
高瀬は、その様子を写真に収め、最後に正面からの写真を撮った。
「OK」
と呟く高瀬の声を合図に、社長に声をかける。
「ありがとうございました。
これで終了です。
お忙しい中お時間作っていただき、本当に感謝してます。
ありがとうございます。
原稿の方なのですが、一度確認していただければと思うのですが」
「確認ですか」
「はい、郵送で送らせていただきますので、訂正個所など教えて頂きたいのですが」
私の言葉に、社長は少しだけ考え込むような顔をすると、
「そうだなぁ」
と、部屋の奥に置かれた無垢材で出来た重厚な、プレジデントデスクの上に置かれた革張りの手帳を開く。
「ここに送るんですよね?」
「はい、そのつもりですが……」
「麻生さんが直接届けてくれたりとかは無理ですか?
僕も、毎日ここにいるわけではなくって」
申し訳なさそうに眉を下げる彼に、
「大丈夫です」
そう答えていた。