彼の瞳に捕まりました!
私の言葉に社長は嬉しそうに頷くと、もう一度名刺を取り出し、裏にペンを走らせた。
「ここに連絡もらえると助かるんですが」
社長は名刺を差し出しながら、微笑む。
そこには、携帯電話の番号が書かれていた。
「この番号にですか?」
「私に直接かかりますから、よろしくお願いします」
「あ……はい
では、こちらに連絡させていただきます」
私の言葉に社長は満足げに頷く。
そんな彼にもう一度頭を下げると部屋を後にした。
仕事を終えて、帰社中の車内。
寄り道したコンビニで買った、紅茶を飲みながら、社長のインタビューを録音したレコーダーを聞き返していた。
そんな私に、隣でハンドルを握っていた高瀬が、呆れたような声をだした。
「ナホ、大丈夫なのか?」
「え?何が?」
問い直した私に、高瀬は大きなため息をつくと、眉をひそめた。
「なにが?」
「だから、大丈夫なんだな?」
念をおすように確認する、
「大丈夫だけど?
仕事も今のところ順調だし」
「大丈夫ならいい」
高瀬はそれだけ言うと、これ以上の話しはない。とでも言いたげに、前に向き直り、缶コーヒーを飲み込むと、ハンドルを握り直した。
そんな高瀬に、息をつくと、「そういえば」
と声をかけた。