彼の瞳に捕まりました!
膨れっ面のまま、ぶつぶつと文句を言うサトコちゃんの脇を通り過ぎ、喫煙室で何食わぬ顔でタバコを吸う男に声をかける。
「高瀬、お待たせ」
同期でカメラマンの高瀬行成(たかせゆきなり)。
彼は吸っていたタバコを灰皿に押し付けると、足元に置いてあったカメラの機材が入ったバッグを肩にかけた。
「眉間」
ニヤリと笑いながら、バッグを持たない方の指で眉間を撫でられる。
そんな高瀬に、
「うるさい」
と、一言言って歩きだした。
地下へと降りるエレベーターの中。
ニヤリと笑いながら、高瀬が口を開く。
「あの日かナホ?」
「違うわよ」
「んじゃ、欲求不満なんだ?
いつでも言えって言ってんのに、足腰たたなくなるまで、相手してやるって」
「ばっかじゃないの?
あほらしい事ばっか言ってないで、オバ様達への褒め言葉でも考えてれば?」
「ったく……何、マジになってんだよ。
お嬢ちゃんに何て言われたんだよ」
呆れたように高瀬は私の顔を覗き込みながら、ニヤリと笑う。
「ババァって、誰?」
「はあ?」
「私、ババァな訳?」