彼の瞳に捕まりました!


「ババァって言われたのかよ?」

高瀬の言葉に、黙って頷く。
そんな私に高瀬は大きなため息をつくと、
私の顔を覗き込むように腰を屈めた。

「ナホがババァなら、俺はジジィだな。
世間知らずなお嬢さんの言葉、いちいち真に受けんじゃねぇ」

「だって……」

さっきの、ぶつぶつと呟く、サトコちゃんの言葉が耳から離れない。

『自分だって、ババァじゃん』

俯いたままの私に、高瀬はもう一度ため息を吐くと、ゆっくりと手を伸ばす。

「しわ寄せてんじゃねぇ……本気でババァになるぞ」

「うっさぁ………んっ」

なんだか楽しげに厭味を言う高瀬に、文句の一つでもと顔をあげた。

直後塞がる唇。

一瞬にして深くなる口づけに、呼吸ができなくなりそうな頃、ゆっくりと温もりが消えた。

「物足りない?」

「ばっ、バカ言わないでよっ!エロ親父っ」

「まぁ、そんだけ言えりゃ平気だな」

ニヤリと笑う高瀬に、二の句が告げない。

そんな私に、彼はそっと頭を撫で、タイミングよく開いたドアから外へと出て行った。

降り際に囁かれる言葉

「菜穂がその気なら、いつでも抱いてやる」

そんな言葉を残して。


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