彼の瞳に捕まりました!


高瀬行成と初めて会ったのは大学生の時だった。

学部の違う私達は直接関係があるわけではなかったけれど、
2年生ももうすぐ終わる、ある日。

たまたま休講になった授業の空き時間を持て余していた私が、たまたま入った校内のカフェ。
そして、たまたま座った席の隣に、

授業と授業の間を埋めていた高瀬が座っていた。

窓際の席に座り、鞄の中から雑誌を取り出しパラパラとめくりながら、コーヒーを飲む。そんな私の前に、彼は突然やって来ると、

「あのさ、モデルやってくれないかな」

そう、突拍子もない言葉を発した。

「え?」

「モデル、やってくれない?
頼む」

「モデルって……私?」

周りをキョロキョロと見渡しながら聞き返す私に、彼は真剣な瞳で私を見つめて、もう一度、頭を下げた。

「俺、高瀬っていうんだけどさ……知らない?」

「高瀬って……高瀬、ユキナリ?」

私の返事に彼は片方の口をあげると、
「そう、高瀬行成」
と、笑みを浮かべた。


同じ学年にいる、

高瀬行成

という男。


彼の噂は、事あるごとに耳にしていた。

それは、決していい噂ではなくて。
いかがわしいお店に出入りしてたとか、
キャバ嬢らしきお姉さんと、並んで歩いてた。とか、
上級生のお姉さんをこっぴどい振り方してた。とか、
そのくせに、そのお姉さんとやるコトやっちゃった。とか……

そんな、フツーの女の子にしたら、最低な噂ばかり。

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