彼の瞳に捕まりました!
「久しぶりに女の部分を引っ張りだされた感想は?」
「え?」
「たまにはいいんじゃねぇの」
馬鹿にしているのか、
本気なのか……
高瀬の言葉から、彼が見えない。
そう感じた。
「たった一度。
しかも仕事で会っただけ、それで相手の気をひきたい。そう思ったりするの?」
思わずでた呟きに、高瀬はハイボールを勢いよく飲み干すと、私が握っていたビールのジョッキを取り上げた。
「ちょ……高瀬?」
「ナホはないのかよ?」
「へ?」
私の返事に、高瀬はやっぱりという表情を浮かべたかと思うと、これでもかという位のため息を吐いた。
「高瀬?」
「女とか男とか、そういう以前の問題だな」
「へ?」
「人として、どうなんだ。って話しだよな」
呆れたように話す高瀬に言葉が出ない。
「おやっさん、それ包んでもらっていい?」
高瀬は立ち上がると、ポケットから財布を出して何枚かの紙幣を差し出す。その様子を黙って見ていた店長は、伝票を手に取ると、高瀬の手から紙幣を取り、カウンターのはしにある小さな金庫からお釣りを取り出して、手渡した。