彼の瞳に捕まりました!
ザワザワとした編集部の自分のデスクで、赤ペンを持ちながら、ゲラ刷りのチェックを進める。
夕べ
『自分で考えろよ』
そう言って、私に冷めた視線を向けた高瀬。
彼は、あんな事をしたとは思えないくらい、普段と変わらない様子で淡々と仕事をこなしている。
もちろん私に接する態度も全く変わらない。
高瀬が私に付けた赤紫色の痕は、しっかり残っているのに……
目立つ場所に付けられたそれを隠すのに一苦労したのを思いだした。
なんなのよ、もう……
こっちは眠れなかったんだけど
一人、なんだかスッキリした顔しちゃって……
本当、ムカつく男。
高瀬への思いつく限りの悪口を頭に思いながら、仕事をこなす。
そんな私に、出勤してきた編集長が、頭を軽く叩いた。
「姿勢悪いよ、麻生」
「え?あ……おはようございます。編集長」
「ちょっといい?」
編集部の端にある、ついたての方を指差す彼女に頷いて立ち上がった。