彼の瞳に捕まりました!
スタジオの脇に積まれた箱から靴や鞄を取り出し、撮影用にセッティングされた台に並べていく。
並べ終わったそれを、高瀬によって写真に収められていく、光の当たり具合や、ちょっとした位置の違いで、同じものなのに微妙に違う写真が出来上がるのを確認するのが、密かな楽しみだったりする。
その行為を何度か繰り返して、今日の撮影が終わった。
箱から出した物を、元通りに片付けていると、とっくに帰ったはずのマサル君が一緒に片付け始めた。
「あれ?マサル君、帰ったんじゃないの?」
「ちょっとね、用思い出して」
「え、じゃあ片付けなんていいから、そっちやっちゃえば?」
「麻生ちゃんに用事なのよ」
片付けていた手を止め、マサル君はじっと私を見つめた。
「たまにはバカみたいに遊んでみる事も大切よ。それで見つかる本当の事だってあるんだから」
「へ?」
「真面目過ぎるのは良くないわ。たまには息抜きしなきゃ~
いいじゃない、誘われる内が華よ~私なんてねぇ」
マサル君は、私が返事を出来ないのを良いことにペラペラと自分の話しをし続けた。
だけど、それはいつまでも煮え切らない私の為を思っての事なんだと思う。
「マサル君ありがとうね。
とりあえず楽しんでくるように努力するね」
「努力って……」
呆れたような顔をしたマサル君に笑顔を見せると、マサル君は、
「麻生ちゃんに彼氏が出来たらチャンスよね~ユキナリ待ってなさいよ~」
と、ギュッと拳を握りしめた。
その言葉に笑みを浮かべながら、胃の奥の方が何故かキリリと痛みだした。