彼の瞳に捕まりました!
お店の中は暖かみのある光に包まれていて、所々にある花瓶とさしてある季節の花にホッとする、そんな場所だった。
予約をとってくれていた社長の名を告げると、店員さんが案内をしてくれる。
簡単な仕切りのあるフロアの奥にある個室。
店員さんは扉をノックすると、
「お連れ様が参りました」
と、ゆっくり襖を開けた。
会釈をして、その場を立ち去った店員さんに頭を下げ、中に入る。
中では浅川社長が、スーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを少しだけ緩めた、リラックスしたような格好で座っていた。
「お待たせしてすみません」
頭を下げる私に、社長は笑って座る様に促す。
そんな社長にまた頭を下げて、腰を下ろした。
「今日はありがとうございます」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
「ご迷惑じゃなかったですか?」
優しい眼差しを向け、社長が問う。
その問い掛けにうまく答えられずにいると、社長がクスッと笑った。
「?」
「お誘いして、会って頂けたという事は、ちょっとは私の事を気にかけて頂いている。そう思ってもいいって事ですよね?」
その言葉に返事が出来ない。
そんな私の態度を、社長は肯定ととったらしい。
いつの間にか『麻生さん』から『菜穂さん』に呼び名が変わり、敬語がなくなった。