彼の瞳に捕まりました!


「でしょ」

満足げな笑みを浮かべ、社長は飲み干してしまった私のおちょこにお酒を注いだ。

「さ、飲んで」

にっこりと笑顔で促され断る事も出来ない。
そんな風に何度かやり取りを繰り返している内に、周りがぼんやりしてくるのを感じてくる。

しきりに瞬きをして、目を擦る私に社長は、

「飲ませ過ぎた?菜穂さん、大丈夫?」

「え、あ、大丈夫です。すみません。でも、もうお酒は十分です」

「そうみたいだよね。出よう、送って行く」

社長はさっと立ち上がると、自分の荷物と私の鞄を手に取り、私の腕を取るとゆっくりと立ち上がらせる。

「大丈夫」

そう言いながらふらつく私に、社長は困ったような笑顔を見せて、

「大丈夫じゃないでしょ。無理しない」

そんな社長の手を離す事が出来ないまま、ふらつく身体を半分抱えられるように、やって来たタクシーに乗り込む。
そんな私の後に続くように、社長もタクシーに乗り込んだ。

「菜穂さん、家どこ?」

「え?あっ……」

一人暮らしのアパートの地名を運転手さんに伝える。
運転手さんは頷くと、ゆっくりと車を出した。


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