彼の瞳に捕まりました!
「家はどこ?」
「だ、大丈夫ですから。ここからすぐですから」
「ダメだって、女の子がこんな時間に一人って危ない以外の何があるって言うの」
「いつもはもっと遅い時間に歩いてますし、本当に大丈夫」
私の言葉に社長は眉をひそめる、そしてため息をついた。
「ダメだよ、菜穂さん酔ってるし……危険だ」
「通いなれた道ですし」
「いいから、家はどこ?」
先程までとは違う不愉快さをあらわにした口調に断る言葉が見つからず、自分の住むアパートの方をを指差した。
社長に手を引かれ、アパートの前にやってくる。
「上?」
「え?そうです。でも、本当にもうここで大丈夫です。ありがとうございました」
「部屋の中入ったら帰る」
私の腕をギュッと掴み直すと、社長はずんずんと歩きだした。
「何号室?」
「あ、3号室。203号室です」
社長は返事をすることなく階段を登ると、部屋の前で立ち止まった。
「あの、ありがとうございました」
「いや、当然の事だから。さ、中に入って」
鞄の中からキーケースを取り出し、玄関の鍵を開けた。
ドアを開け、中に入ってもう一度社長に頭を下げた。
「今日は色々ありがとうございました。ご迷惑おかけしてすみません」
「迷惑?」
「こんなふうに送って頂いたりして、本当すみませんでした」
「じゃあ、お礼して」
「え?」