彼の瞳に捕まりました!
6
「麻生さん」
その声に高瀬が振り返った。
そして、
「浅川…社長?」
と、呟いたかと思うと私に向き直って、
「約束してたとか?」
「ううん、してないよ」
「麻生さん。こんにちは」
チャコールグレーの質の良さそうなスーツを着こなした浅川社長が頭を下げた。
「こんにちは。お仕事ですか?」
「旅行雑誌の方で取り上げて頂くことなって、その打ち合わせにやって来た所なんですよ。麻生さんの所だなとは思っていたんですけど、まさか会えるなんて」
にこやかな顔を向ける社長。
その後ろから、秘書とおぼしき女性が慌てて駆け寄ってきた。
「社長。急にいなくならないで下さい」
カッチリとしたスーツを着た彼女は、社長にキッパリと言い切ると高瀬と私に頭を下げた。
「先日はお世話になりました」
「こちらこそ、色々とありがとうございました」
高瀬と二人頭を下げた。
そんな私達に社長が穏やかな声を出した。
「高瀬さん」
「はい」
「素敵な写真をありがとうございました」
「ありがとうございます」
高瀬はまた深々とお辞儀をする。
それにならってもう一度頭を下げた。