ヴァンパイアヒューマン−桜−
『香り?香りって…まさかサラ、目が…』
ウィルはサラの顔を心配そうに覗きこんだ。
『うん…もうほとんど見えてない…。でも、ちゃんとこの心でこの桜や大好きなウィルの事は…見えてるから…』
サラはそう言って優しく微笑み、頭を隣に座るウィルの肩に預けた。
『ねぇ、ウィル…ごめんね。あたしがヴァンパイアのせいで、ウィルを…こんな事に巻き込んじゃってさ…。もし、神様が…あたしに生まれ変われるチャンスをくれたなら…今度生まれ変われるならあたし…ヒューマンになりたいな…。ヒューマンになって…またウィルと出会って…それで…ずっと一緒に…いたい…な…ずっとずっと一緒に…いたい…』
消え入りそうなか細い声で、そう呟くサラの目から涙が頬を流れ落ち、サラは優しく微笑んだまま静かに息を引き取った。
『サラ!?』
ウィルは息を引き取ったサラの身体を揺すった。
『サラ…サラァァァァ!!』
ウィルは抜け殻になったサラの身体を抱きしめ、涙を流しながら天高く叫んだ。
そんな二人の別れを告げる、愛と春の終わりを儚く表すかのように散り行く桜の花びらが、雪のようにただ舞い続けた。
悲しみの桜雪が二人を包むように、ただ舞い続けた。