ヴァンパイアヒューマン−桜−


鼻唄のする方へとたどり着くと、完全に霧が晴れていた。


するとその場所には花たちが咲き乱れ、蝶々が飛び回っていた。


そして花たちが囲むように中央には一本の大きな桜の木があり、優しいそよ風に吹かれながらユラユラとたなびいていた。


『ここは…一体…』


ジャックは今までとはあまりにも違う景色に驚き戸惑っていた。


『見覚えがある…この場所って、グラバドールに続く一本道から外れた場所にあった花畑にそっくり…』


ミーナは見覚えがあるその景色に懐かしさを覚えた。


『あの一本道の外れに花畑なんてありましたっけ?』


ジャックは不思議そうにミーナに尋ねた。


『ええ。ある日突然花や桜たちが枯れ果て、今はもう無くなってしまったけど…』


ミーナはそう言って桜の木を見つめた。
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