短編集


 俺の頭からイカした焼きそばパンのカツラが半分ほど落ちると同時に、テラシマさんは、持っていたおにぎりを原型がなくなるほど力いっぱい自分の頭に乗せた。


「オカダくん、ナイスファッションだね」


 テラシマさんは、瞳に小さな光を輝かせ、親指を突き出して笑った。皮肉でも同情でもないテラシマさんの言葉は、俺の卑屈で塗り固められたロックでビートなアイアンハートを丸裸にする力を持っているらしい。だからだ、俺が「オカダじゃねえし。ミヤタだし」としか言えなかったのは。

 翌日、クラスにおかしなファッションセンスを持つ生徒がひとり増えた。


「ナイスファッション、テラシマさん」
「ナイスファッション、ミヤタくん」


俺のロマンティックが始まる日も、そう遠くない。



END
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