魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
自分もブルーストーン王国の王女だった時は…着飾り、正装し、王族らしい日々を送っていた。
だが兄との禁断の愛に悩み、元々剣術に秀でていた腕っぷしだけで出奔し、現在はゴールドストーン王国の王女付きの剣士。
――ラスは着飾らない。
だからこそ自分の分もと思い、風呂から上がると髪を乾かしてやり、鏡の前に立たせて着替えを手伝った。
「私…今までお父様たちを心配させたよね」
「ああそうだな。2年間の間で片手で数えるほどしか話してないだろう?少し気分が晴れたのなら今日は沢山話すといい」
「…でもリロイも居るんでしょ?」
ラスが気にしているのは、その一点のみだった。
あんなに慕い、あんなに仲の良かったリロイの姿を見るのも嫌がり、もちろん話すことさえしようとしない。
コハクに愛されて愛されて、その直後に最愛の者を奪われたラスの魂はひび割れ、リロイは憎き者へと変貌していた。
「リロイも同席しているが、私も居る。お前が嫌がることは絶対にさせない」
「うん…ありがとう」
クローゼットの中にはここに帰って来てからの2年間の間にカイやソフィー、リロイが贈ったドレスで溢れていたが、
ラスはそれを着ようとせず、コハクが本体に戻った時に今まで愛用していたドレスや私物を影から出してもらい、それを使い続けていた。
「このドレスもこのドレスも…全部コーのお気に入りなの。コーが帰ってくるまで大切にしなくちゃ」
「…ああ、そうだな。ほら、次は化粧だ。美しくしてやる」
この2年の間でものすごく綺麗になったラスは化粧をせずとも美しかったが、白粉をつけ、口紅を引くといっそうその美貌は際立った。
「綺麗にしたって…見てほしい人は居ないのに…」
ぽつりと呟き、バルコニーに出るとまた独り言のように夜空に向かって、祈った。
「神様…神様、私のコーを返して下さい。コーが死んでないのなら、私に返して…」
「…ラス、行こう」
ラスの手を引っ張って、部屋を出た。
その時――
何かが空を、舞った。
だが兄との禁断の愛に悩み、元々剣術に秀でていた腕っぷしだけで出奔し、現在はゴールドストーン王国の王女付きの剣士。
――ラスは着飾らない。
だからこそ自分の分もと思い、風呂から上がると髪を乾かしてやり、鏡の前に立たせて着替えを手伝った。
「私…今までお父様たちを心配させたよね」
「ああそうだな。2年間の間で片手で数えるほどしか話してないだろう?少し気分が晴れたのなら今日は沢山話すといい」
「…でもリロイも居るんでしょ?」
ラスが気にしているのは、その一点のみだった。
あんなに慕い、あんなに仲の良かったリロイの姿を見るのも嫌がり、もちろん話すことさえしようとしない。
コハクに愛されて愛されて、その直後に最愛の者を奪われたラスの魂はひび割れ、リロイは憎き者へと変貌していた。
「リロイも同席しているが、私も居る。お前が嫌がることは絶対にさせない」
「うん…ありがとう」
クローゼットの中にはここに帰って来てからの2年間の間にカイやソフィー、リロイが贈ったドレスで溢れていたが、
ラスはそれを着ようとせず、コハクが本体に戻った時に今まで愛用していたドレスや私物を影から出してもらい、それを使い続けていた。
「このドレスもこのドレスも…全部コーのお気に入りなの。コーが帰ってくるまで大切にしなくちゃ」
「…ああ、そうだな。ほら、次は化粧だ。美しくしてやる」
この2年の間でものすごく綺麗になったラスは化粧をせずとも美しかったが、白粉をつけ、口紅を引くといっそうその美貌は際立った。
「綺麗にしたって…見てほしい人は居ないのに…」
ぽつりと呟き、バルコニーに出るとまた独り言のように夜空に向かって、祈った。
「神様…神様、私のコーを返して下さい。コーが死んでないのなら、私に返して…」
「…ラス、行こう」
ラスの手を引っ張って、部屋を出た。
その時――
何かが空を、舞った。