魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
グラースに手を引かれたラスが食卓の間に姿を現わした時――
リロイの胸はきゅう、と締め付けられて、無意識に立ち上がった。
「ラス…」
「…」
相変らず伏し目がちで言葉は交わそうとしないが、こうして皆の前に姿を現わしてくれただけで十分だ。
「さあ私のプリンセス、座って」
カイの真向かいに座ると、カイの両隣は母のソフィーと、そしてリロイ。
皆が熱い視線で見つめてきているのがわかる。
…気持ちを切り替えなければ。
リロイとだけ話さなければいい。
リロイだけ、見なければいい。
「ラス…とても綺麗よ」
「お母様…ずっと部屋に閉じこもってて…ごめんなさい」
顔を上げるとカイもソフィーも感極まった表情で何度も首を振り、笑顔で受け入れてくれた。
「そんなことはいいんだよ。徐々に徐々に、元の生活に戻ってくれればいいんだ。さあ、食べよう」
「でも私…食欲が…」
「沢山食べないとそれ以上ガリガリになったら魔王が嘆くぞ」
隣りのグラースから小声でそう言われると笑みが込み上げ、ナイフとフォークを手にした。
「やだ。オーディンさんからもらった蜂蜜だって毎日舐めてるもん。…もう無くなっちゃいそうだけど…」
「蜂蜜のおかげで胸が大きくなったのか。じゃあ次はもうちょっと太れ」
2人でくすくす笑っていると、父と母はそれを嬉しそうに見守っていたが…リロイは、苦しそうな表情をしていた。
――ラスの目にもそんなリロイの表情は入っていたが、話しかけることはない。
コハクの命を奪ったかもしれない男を絶対に許すものか。
「ラス…僕と踊って頂けませんか?」
「嫌です」
勇気を振り絞ってダンスに誘ったリロイに即答で返したラスは凛としていて、またリロイの胸を焦がした。
「許してもらおうなんて思ってない。だけどラス…僕を見て。僕とあの時の話を…」
「嫌です。その話はもうやめて。やめないのなら部屋に戻ります」
「…」
邪険にされ、リロイの瞳は潤み、俯いた。
以前のような関係に戻ることは、もう敵わないのだろうか。
リロイの胸はきゅう、と締め付けられて、無意識に立ち上がった。
「ラス…」
「…」
相変らず伏し目がちで言葉は交わそうとしないが、こうして皆の前に姿を現わしてくれただけで十分だ。
「さあ私のプリンセス、座って」
カイの真向かいに座ると、カイの両隣は母のソフィーと、そしてリロイ。
皆が熱い視線で見つめてきているのがわかる。
…気持ちを切り替えなければ。
リロイとだけ話さなければいい。
リロイだけ、見なければいい。
「ラス…とても綺麗よ」
「お母様…ずっと部屋に閉じこもってて…ごめんなさい」
顔を上げるとカイもソフィーも感極まった表情で何度も首を振り、笑顔で受け入れてくれた。
「そんなことはいいんだよ。徐々に徐々に、元の生活に戻ってくれればいいんだ。さあ、食べよう」
「でも私…食欲が…」
「沢山食べないとそれ以上ガリガリになったら魔王が嘆くぞ」
隣りのグラースから小声でそう言われると笑みが込み上げ、ナイフとフォークを手にした。
「やだ。オーディンさんからもらった蜂蜜だって毎日舐めてるもん。…もう無くなっちゃいそうだけど…」
「蜂蜜のおかげで胸が大きくなったのか。じゃあ次はもうちょっと太れ」
2人でくすくす笑っていると、父と母はそれを嬉しそうに見守っていたが…リロイは、苦しそうな表情をしていた。
――ラスの目にもそんなリロイの表情は入っていたが、話しかけることはない。
コハクの命を奪ったかもしれない男を絶対に許すものか。
「ラス…僕と踊って頂けませんか?」
「嫌です」
勇気を振り絞ってダンスに誘ったリロイに即答で返したラスは凛としていて、またリロイの胸を焦がした。
「許してもらおうなんて思ってない。だけどラス…僕を見て。僕とあの時の話を…」
「嫌です。その話はもうやめて。やめないのなら部屋に戻ります」
「…」
邪険にされ、リロイの瞳は潤み、俯いた。
以前のような関係に戻ることは、もう敵わないのだろうか。