魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
“コハクが生きているかもしれない”という一縷の望みを捨てきれない。
だから、こうして深夜になると魔法剣の前に座って自ら命を絶つことを考えつつも、それができないでいる。
「コー…どこに居るのか分かれば、すぐにでも会いに行くのに…」
――またひとつ白い息を吐いて部屋を出て行く前、やわらかい光を放つゴールドストーンに触れた。
指先からあたたかい波動が身体全体に沁み渡り、こうすると少しでも魂の傷を癒すことができた。
この聖石がなかったら今頃この魂は粉々になっていただろう。
「私…リロイのお嫁さんになんて絶対ならないから。私にはコーが居るの。コーが私のお婿さんなの」
封印の間を抜けて長い階段を下り、そして再び螺旋階段を上って自室へ着くと、隣りのグラースは眠っているようでほっとしながら中へ入った。
…窓際には、コハクの代わりにグリーンリバーを治めていたオーディンから貰った蜂蜜入りの大きな瓶。
両手で抱えても持てないほどに大きな瓶の中に入った蜂蜜はもう残り少ない。
言われた通り毎日この蜂蜜をスプーンひと匙分掬って舐めて、それを2年間続けてきた。
背も伸びたし胸も大きくなったのは、きっとこの栄養満点の蜂蜜のおかげだ。
だが…
あれからオーディンは姿を現わさなかった。
オーディンもローズマリーもベルルも、ティアラも…
みんなみんな、ばらばらになってしまった。
「ずっと旅してたかったな…。ここには戻って来たくなかった…。コー…イエローストーン王国の再建なんて私ひとりじゃ無理だよ。コーが居ないと私…」
涙声になり、両の掌を両目に押し付けながら涙を堪えたその時――
コン。
バルコニーのガラスを叩く音がした。
まさか…
まさかと思い、椅子を蹴倒しそうな勢いで立ち上がるとバルコニーの鎧戸を開け放った。
「コー!?」
「…あたし。小さなお姫様…元気だった?」
「…ベルル…」
あれから行方知れずだったベルルが人のサイズになり、立ち尽くしていた。
真っ黒な巻き毛の髪にきつく吊った目元…
2年ぶりの、再会。
だから、こうして深夜になると魔法剣の前に座って自ら命を絶つことを考えつつも、それができないでいる。
「コー…どこに居るのか分かれば、すぐにでも会いに行くのに…」
――またひとつ白い息を吐いて部屋を出て行く前、やわらかい光を放つゴールドストーンに触れた。
指先からあたたかい波動が身体全体に沁み渡り、こうすると少しでも魂の傷を癒すことができた。
この聖石がなかったら今頃この魂は粉々になっていただろう。
「私…リロイのお嫁さんになんて絶対ならないから。私にはコーが居るの。コーが私のお婿さんなの」
封印の間を抜けて長い階段を下り、そして再び螺旋階段を上って自室へ着くと、隣りのグラースは眠っているようでほっとしながら中へ入った。
…窓際には、コハクの代わりにグリーンリバーを治めていたオーディンから貰った蜂蜜入りの大きな瓶。
両手で抱えても持てないほどに大きな瓶の中に入った蜂蜜はもう残り少ない。
言われた通り毎日この蜂蜜をスプーンひと匙分掬って舐めて、それを2年間続けてきた。
背も伸びたし胸も大きくなったのは、きっとこの栄養満点の蜂蜜のおかげだ。
だが…
あれからオーディンは姿を現わさなかった。
オーディンもローズマリーもベルルも、ティアラも…
みんなみんな、ばらばらになってしまった。
「ずっと旅してたかったな…。ここには戻って来たくなかった…。コー…イエローストーン王国の再建なんて私ひとりじゃ無理だよ。コーが居ないと私…」
涙声になり、両の掌を両目に押し付けながら涙を堪えたその時――
コン。
バルコニーのガラスを叩く音がした。
まさか…
まさかと思い、椅子を蹴倒しそうな勢いで立ち上がるとバルコニーの鎧戸を開け放った。
「コー!?」
「…あたし。小さなお姫様…元気だった?」
「…ベルル…」
あれから行方知れずだったベルルが人のサイズになり、立ち尽くしていた。
真っ黒な巻き毛の髪にきつく吊った目元…
2年ぶりの、再会。