魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ベルルはすらりとしていて背も高く、とびきりの美人だった。

だがこの2年間でラスの背も160㎝になり、170㎝のベルルをはにかませた。



「…大きくなったのね」


「妖精さん…今までどこに…?あ、わかった、コーと一緒に…!」


「コハク様は居ない。あんたも見たでしょ。コハク様は…死んだの」



――突きつけられたくない事実を突きつけられた。


絶対に絶対に認めたくない事実を、突きつけられた。


ベルルはうなだれながら部屋の中へ入ると、呆然と立ち尽くすラスを肩越しに振り返り、肩で大きく息をついた。


「もっと早くここに来れればよかったけど…あたしも決心つかなかったの。もしかしたらここに居るんじゃないかって思いながら来れなかった。やっぱり…居ないか」


「…妖精、さん…」


「あんたもつらい思いしたでしょ。あたし…あんたならコハク様を任せられるって思ってた。コハク様はあんたしか見てなかった。だから任せられると思って…」


「コーは…コーは本当に…死んだの…?」


脚の力が抜けてへなへなと座り込んだラスを気遣うようにベルルが前に座った。

黒妖精もまた一縷の望みを捨てきれずに覚悟を決めてここへやって来たのだ。

だが…コハクは、居ない。



「コーが…コーが居ないの…!でもコーが死んだって思えないの!妖精さんもそう思うでしょ?コーが私を残して死ぬと思う?もしそうなら…!」


「だったら死なないで。あたしも諦めない。コハク様を捜して見せる。ほら鼻水出てる。あたしが一緒に寝てあげるから」


「…妖精さん…」


「ベルルでいいよ。…今まで意地悪してごめん。あたしも2年間つらかった。でも…あんたはもっとつらかったんだね」



一緒にベッドへ入ると、ベルルの細い身体に思いきり抱き着いて唇を噛み締め、涙を堪えながら言葉を振り絞った。


「私も諦めない…!絶対コーを捜して見せるの。絶対また…抱きしめてもらうの」


「うん。今日はもう寝よ。明日からその方法を一緒に捜そ」


「うん…」


――その会話を、ラスの部屋の外からグラースが聴いていた。


「ラス…」


自分にできることをしなければ。
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