魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ケルベロスとドラちゃんが隣同士に並びつつ喉を鳴らして牽制し合い、オーディンが眼帯の位置を調整しながら二手に分かれることを提案した。


「私とローズマリーがブルーストーン王国へ行きます。グラースはここへ残って街の警戒にあたると言っていたので中へ入るための紹介状も書いてもらいましたから」


「じゃあ僕とティアラはレッドストーン王国に行きます。ティアラから住民に訴えかければきっと効果覿面でしょう」


『乗せたくない』


「え?」


突然また不満を口にしたドラちゃんが不服そうにしてサラマンダーに何か命令しているコハクと、そんなコハクをにこにこしながら見つめて椅子を揺らしているラスに視線を遣り、もう1度否定した。


『俺はベイビィちゃんの乗り物なんだ。言うことを聞かせたいならベイビィちゃんに縁のある何かを寄越せ』


『ずるいぞドラ野郎!僕だってラスの何かが欲しい!』


魔物同士が喧嘩をはじめてしまったので、とにかくこの2匹を説得しなければ作戦がとん挫してしまうことを恐れたリロイは2匹の間に立つと冷や汗を流しながらうなずいた。


「わかった。僕からラスに言っておくから…何がいいんだ?」


『ベイビィちゃんのパンツ』


『あ!今僕が言おうと思ってたのに!」


…主に似てどヘンタイの魔物が今度はラスの下着を賭けて口論をはじめてしまい、そういうのを聞き逃さない魔王が瞳を真っ赤に輝かせ、2匹をぞっとさせた。


「ふざけんなよ俺が欲しい位だっつーの!早く行けよ、解雇するぞ!」


「?コー?私の何が欲しいの?」


急に大人しくなった2匹の背中にリロイたちがそれぞれ乗り込み、ビラの入った大きな袋も背中に括りつけると、皆がラスとコハクに手を振った。


「気を付けてね!」


「ラス、風邪引かないように気を付けるのよ!」


心配してくれるティアラにまた大きく手を振り、二手に分かれて飛び立つと、ラスは膝に乗せた蜥蜴のごつごつした背中を撫でながらコハクに笑いかけた。


「みんな頼もしいね。でもコーが1番頼もしいよ!」


「だろお?なあなあ、俺もチビのが欲しいなあ」


「だから何を?」


「ふふふふふ」


含み笑い。
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